ネットを活用した最強の勉強法 世界史の勉強法 講師 茂木 誠

ネットを活用した最強の勉強法 世界史の勉強法 講師 茂木 誠
02

実際の世界史勉強法

02-A覚えるべき基本語句はいくつくらい?

共通テストは簡単なのですが、出題範囲が全時代、全地域におよびますので、覚えるべき用語の数は、

約5000語です。

初めて聞いた方は、気持ちが折れると思います。

これだけの情報を入試当日までに頭に入れろ、と要求されているわけです。約5000の膨大な知識をアタマの引き出しに蓄えていき、必要に応じて取り出すことができる。この情報処理能力が、「世界史の学力」なのです。

「世界史が苦手」な人は、「理解できない」のではなく「覚えられない」のです。

なお、覚える量は世界史も日本史も同じです。日本語(漢字表記)か外国語(カタカナ表記、中国史だけは漢字表記)かという違いだけです。どちらが覚えやすいかは、人それぞれですが、漢字がイヤで世界史をとったら中国史で泣かされた、というのはよくある話です。

5000語というのは膨大な分量なので、学校の定期試験対策みたいな「一夜漬け」は無理です。100日でやろうとすれば、1日50語ですが、300日でやれば1日16語でマスターできます。時間がかかるのは仕方ありません。最低でも1年間かけて、コツコツやってください。その方法は、のちほど伝授します。

02-B出やすいテーマや時代はある?

古代から現代まで、全地域・全分野からまんべんなく出題されるのが、共通テストの特徴です。年度により、出題分野のかたよりはありますが、特に目立つ規則性もありません。

得点しやすい単元はあります。ラテンアメリカ、アフリカ、東南アジアです。教科書でヨーロッパと中国は膨大なページ数がありますが、中南米、アフリカ、東南アジアは数ページしかありません。すべての単元から出題されますから、情報量の多い単元からも、少ない単元からも同じように出題される。当然、情報量の少ない単元−−−−ラテンアメリカ、アフリカ、東南アジアが、受験生にとっては「ねらい目」になります。また、基本的な文化史も必ず出題されますので、教科書の太字レベルの思想家、作家、科学者の名前は、確実に押さえてください。

02-C年号は全部、覚えるの?

「年代順に並び変えなさい」、「同時代のできごとを選びなさい」という問題も、よくあるパターンです。 これはサンプルとしてセンター試験の問題を使用していますが、共通テストにも同様の問題が見られます。

センター試験の問題

17世紀のイギリスで起こった出来事について述べた次の文a~cが、年代の古いものから順に正しく配列されているものを一つ選びなさい。

  • a. チャールズ1世が処刑された。
  • b. クロムウェルによって航海法が発布された。
  • c. 議会が権利の請願を国王に提出した。

この問題は、年号を覚えなければ解けないのでしょうか?

実はそうではありません。

国別、王朝別に情報を整理しておくのです。この問題の場合でしたら、スチュアート朝時代のイギリスの王や指導者の名を順番に言えるようにするのが第一。次に誰のとき何が起こったのか、情報をひも付けけしていくのが第二の作業です。
 

  • ジェームズ1世...王権神授説、メイフラワー号事件。
  • チャールズ1世...権利の請願を無視、議会解散、スコットランド反乱、ピューリタン革命で処刑。
  • クロムウェル...共和政、アイルランド遠征、航海法、護国卿。

 
こうやって細分化することで、アタマの中の情報を取り出しやすくするのです。

大きな袋に洗濯ものを投げ込んでしまうと、必要なものを取り出すのが大変ですね。下着、靴下、シャツ...と分類し、たたんで引き出しに入れていけば、必要なものを必要なときに取り出せるでしょう。これと同じで、あたまの中に引き出しを作っていくのがこの作業です。

現代史なら、政治体制(○○共和政)や、大統領や首相ごとに引き出しを作っていく。同じやり方ですね。

難しいのはヨコの関係です。「ヨーロッパでこの事件が起こった時、中国では...」という問題、これは基本的な年号を覚えておく必要があります。とくに重要な事件が重なった年号は覚えておく。どれを覚えるかは、実際の授業のなかで指摘します。
 

  • ・前202年...ザマの戦い、垓下の戦い
  • ・1402年...アンカラの戦い、靖難の変終結
  • ・1453年...百年戦争終結、ビザンツ帝国滅亡
  • ・1867年...スエズ運河開通、大陸横断鉄道開通
  • ・1922年...アイルランド自由国、ローマ進軍、ソ連成立

 
あとは東西交流の重要人物、たとえば張騫(ちょうけん)、班超(はんちょう)、法顕(ほっけん)、玄奘(げんじょう)、義浄、マルコ=ポーロ、イブン=バットゥータ、鄭和(ていわ)...について、エピソードとして覚えておく。あくまでタテ軸(時系列)の整理が先で、ヨコにつなげるのはそのあとですね。

02-D年間のスケジュール

理系科目のような「積み上げ型」の科目とは違って、社会科、とくに歴史は、膨大な量の情報が「水平に広がっている」というイメージですね。何か「公式」「定理」のようなものがあって、それさえマスターすればなんでも解けるという科目ではないのです。膨大な量の情報をコツコツマスターしていく。

N予備校の授業では、4月の開講から12月まで9カ月かけて、世界史教科書のすべての単元を扱います。毎週の授業に合わせてきちんと復習をしていけば、自然に力がついていきます。

予習は必要ありません。復習はきっちりやってください。

02-E単語ではなく、文章で覚える

単語でバラバラに覚えたことは、すぐに忘れます。ところが文章で覚えたことは忘れません。それが結局、近道なんです。

たくさんの知識を入れようとして、一問一答をやるのはいいのですが、それと同時に、「意味のまとまり」としてストーリーを作って覚えたほうが楽に頭に入り、長く記憶に残ります。

世界史の教科書を物語だと思って、イメージをふくらませながら文章で覚えてください。共通テスト対策にも私大対策にも国公立対策にもなります。

『桃太郎』の話を知っていますね。おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてくる。おじいさんが桃を割ってみたら中から男の子が出てくる。桃太郎はぐんぐん成長して、イヌ・サル・キジを従えて鬼が島に渡り、村人を苦しめてきた鬼を退治する...子どもにとっては強烈な話です。

桃太郎の登場人物がただ並んでいて、「桃太郎の家来になった動物として誤っているものを次の①〜④から選べ」と問われたのでは、おもしろくも何ともありませんね。人間は、情報を物語化することで記憶しているのです。

残念ながら、世界史教科書は何のイメージもわかないカタカナの羅列になっています。物語がないのです。

「西アフリカのガーナ王国は金を豊富に産したので、ムスリム商人が塩をもって訪れ、金と交換した。ムラービト朝の攻撃によるガーナ王国の衰退は、西アフリカのイスラーム化をうながした」(『詳説世界史B』山川出版社)。

この、無味乾燥な文章を物語化すると...

「大河ニジェール川のほとりで平和に暮らしていた黒人たちがガーナ王国をたてた。砂金が採れて豊かな生活だったが塩が不足していた。北方のサハラ砂漠に済む貧しい遊牧民のベルベル人はイスラームに改宗した。砂漠の岩塩を掘りだし、ガーナ人の金と交換した。ところが欲に目のくらんだベルベル人は、ジハード(聖戦)と称して異教徒ガーナを攻撃してきた。黒人たちはこれに対抗してイスラームに改宗した...」

となります。この場合はガーナに感情移入して、イメージがわき起こるようにしたのです。どうしてもイメージがわかない場合は、ダジャレでもかまいません。「ベルベル人は最初、人口がすくなく村人(ムラービト)だった」、「最後のソンガイ王国は、モロッコに征服されて大損害(ソンガイ)」...こういう小ネタを教科書やノートに書き込んでいくのです。

また、視覚イメージ(写真や地図)は、言語情報(ベルベル人という言葉)より強烈な記憶として残ります。

N予備校の世界史授業では、歴史を物語として語り、地図や似顔絵をたくさんお見せして、遠い世界のことがイメージ化できるように工夫しています。みなさんも世界史図説(地図資料)やネットで調べ、「おお、ベルベル人、強そうだなぁ」、「ムラービト朝、でかいなぁ」と感心する。似顔絵を描いてみる、略地図を描いてみることが、知識をモノにする近道なのです。

02-F基礎トレーニングとしての一問一答

サッカー選手は、練習試合の前にドリブルやキックの練習を徹底的にやります。野球選手ならバッティングや走りこみ、ゴルフ選手ならスイング。こういう基礎トレーニングを怠けて、試合にばかり出たがる選手は成績を残せません。それでは、世界史の基礎トレーニングとは何か?

問題集です。空欄式でも一問一答式でもかまいません。たとえばアフリカ史に関する歴史用語を徹底的に頭に叩き込みます。

N予備校アプリの問題集「世界史ベーシック」は、この一問一答スタイルです。

慣れてきたらこれだけでも十分なのですが、はじめて世界史を勉強するという方は、紙に書いて覚えることをお勧めします。手を使って書くことで記憶が鮮明になるのです。

縦に1、2、3、と答えを書いていって、すぐに丸付け。間違った番号だけ右に書き出し、左側を隠してもう一度やってみます。全部覚えるまで、この作業を続けるのです。

どうしても覚えられない単語というのが必ず出てきますので、それを集中攻撃します。「トンブクトゥ」が覚えられないときは、「トンブクトゥ、トンブクトゥ、トンブクトゥ...」と呪文のように何十回も唱え、書いてみる。トンブクトゥの写真を探す。地図にマーキングしておく。

なお、記憶が定着するのには数時間かかります。せっかく無理して「トンブクトゥ」を覚えたのに、記憶が固まる前に別の情報を上書きしてしまうのはもったいないことです。

これを防ぐには、情報を遮断するのが一番。つまり暗記モノの勉強をしたあとは、テレビを見たりネットをやったりしないで、寝てしまえ、ということです。

逆にいえば、暗記モノは寝る前にやるのが最も効果的なのです。翌朝、もう一度やってみてください。記憶がしっかりと定着しているのがわかるでしょう。

02-G練習試合としてのセンターと共通テストの過去問

基礎が出来上がったら、今度は練習試合です。本番と同じ形式で戦ってみる。それにはセンターと共通テストの過去問を解くのが一番です。センターと共通テストの過去問には、年度別のものと単元別のものがありますが、はじめての方は単元別のものを選んでください。年度別ですと、教わってない範囲の問題が混ざって効率が悪いのです。

N予備校アプリの問題集「世界史スタンダード」は、単元別の共通テスト問題集です。はじめての方は、やはり紙に書いて覚えていったほうが身につくでしょう。

共通テストの答えは必ず正誤文の四択(次の①〜④から選べ)になっています。ノートには①〜④の答えの他に、問題文のどの部分が間違っているのかを書いていきます。

次の文の正誤を判定してください。

① ガーナ王国の王は、イスラーム教に改宗した。

イスラームに改宗したのはマリ王国ですから、ノートには、

① ガーナ→マリ

と書いておくのです。これでどうしてこの文を誤りだと判断したのか、明確になります。
もし、「ガーナ→ソンガイ」と間違えてしまったら、答え合わせのときに赤ペンで「×ソンガイ→マリ」と書いておきましょう。「マリとソンガイの順番を間違えたんだな」とわかり、教科書や用語集で確認することで、記憶が鮮明になるのです。

02-H「手で書く」ことは、共通テスト対策にも論述対策にも有効!

国公立二次試験や早慶の論述対策として必要なことは、文を「書く」練習です。「書く」という行為は、知識の整理ができ、記憶の定着にもつながるのです。

N予備校の生授業では、「書く」練習をさせています。<挙手>ボタンで送信してもらった生徒の文章を、その場で私が赤ペンを使って添削していくのです。

ネット授業は、動画を見ればそれで完結というイメージをもっていたら、それは間違いです。それでは大手予備校の衛星放送授業と同じになってしまいます。積極的にコメントを書き、アンケートに参加し、<挙手>ボタンを押して答案を送る。自分で手を動かしてはじめて、自分の知識になるのです。質問は授業中のコメントでいただければその場で答えますし、Q&Aでも随時受け付けています。

授業中の添削例

過去問演習のタイミング

「受験勉強を、いつ始めればいいですか?」

という質問をよく受けます。

「すぐ始めなさい」

そのほうが効率的だからです。授業で学習したことを、一問一答で覚え、過去問で解く。同じ情報のinput、outputを繰り返すことで記憶は脳に深く刻みこまれます。こういう記憶は、時間が経っても簡単には消えません。ノートに鉛筆で強く書いた文字は、消しゴムで消しても跡がのこる。あれと同じです。あとで忘れても、すぐに思い出せるのです。

一つの単元(たとえば「古代オリエント」)を授業で学習したら、同じ単元の一問一答(世界史ベーシック)で知識を固め、共通テスト対策問題集(世界史スタンダード)、私大問題集(世界史ハイレベル)をやるというサイクルを確立すればよいのです。

02-I世界史は毎日やらないとだめ?

世界史の勉強は毎日やらなくても、週2~3日でもよいでしょう。そのかわりまとまった時間をとり、その週に習った単元の問題を全部解いてみるなど、勢いでやったほうが効果的です。

何かに集中、没頭するには、30分以上同じことをする必要があります。他のことが気にならなくなって、気がついたら1時間、2時間がすぎていた、という精神状態、「ノってきた」状態にもっていくのです。

世界史の勉強でも、こういう時間を週に何回かもてばいいのです。30分ずつチマチマやるより効率的です。これは教科の特性なので、語学系は毎日少しずつやるべきでしょう。

TOP
01BACK
03NEXT

最強の勉強法TOP