ネットを活用した最強の勉強法 現代文の勉強法 講師 高橋 廣敏

ネットを活用した最強の勉強法 現代文の勉強法 講師 高橋 廣敏
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究極の思考力養成法

10-Aミクロとマクロの視点を同時に持つ

最後に、究極の思考力について述べます。現代文の問題を解いているとき、大切なのは、ミクロの視点とマクロの視点を同時に持つことです。ミクロの視点とは、たとえば、傍線に書かれていることを一語一語注意しながら正確に解釈する視点です。蟻の目と言い換えてもいいでしょう。それに対して、マクロの視点とは、文章全体で、筆者は何を言おうとしているのか、それを把握する視点です。鳥の目と言い換えることもできます。

全体は、部分から成り立っているし、部分は、全体の一部です。したがって、部分をしっかりと理解することによって、全体が理解できるし、全体を理解しているからこそ、その一部としての部分の意味がわかるともいえます。

「神は細部に宿る」といいます。全体は、部分に現れるし、部分は、全体を反映しているという意味です。また、「木を見て、森を見ず」という言葉もあります。部分ばかり見て、全体に目を向けないことを戒める言葉です。

現代文の読解において、大切なのは、部分を読みながらも、その部分が全体の中でどのような意味を持っているのかを常に意識することです。それがミクロの視点とマクロの視点を同時に持つということに他なりません。蟻の目と鳥の目を同時に持つ。それは、現代文のみならず、世の中の森羅万象に当てはまることだともいえます。

ミクロの視点とマクロの視点を同時に持つことができれば、その受験生は、最強の受験生といえます。

10-B無我夢中になってみる

究極の思考力をつけるための方法ですが、とりあえず、目の前の問題に対して、無我夢中に取り組むことをおすすめします。すぐに勉強の結果を求めるのではなく、文章を読み、問題を解くという作業に没入するのです。

実は、現代文の場合、暗記科目ではないので、これだけ覚えておけば、これだけ成績が伸びるということは、ありません。勉強量と実力が正比例するわけではないのです。

では、どのように伸びるかというと、現代文の場合、幾何級数的に実力が伸びる場合がほとんどです。Yを実力、Xを時間と考えた場合、たとえば、Y=2のX乗という式になります。

10か月間の勉強で、目標の実力を1000と仮定しましょう。最初の1か月では、2です。2か月目では4、3か月目では8。こういう伸び方をします。目標が1000ですから、学習に即効性を求める人は、自分の実力が1000分の8であることに焦りを感じてしまいます。また、そこで、効果がないと思って勉強を止めてしまう人も少なくありません。

一方、無我夢中に取り組む人は、そんなことは考えません。知らないことを知る、わからないことがわかる。できないことができるようになる喜びを感じながら、日々を過ごすだけです。考えてみれば、実力だって、2から8へと4倍になっています。

その後の成長曲線ですが、4か月目では、16、5か月目では、32、6か月目では、64、7か月目では、128、8か月目では、256、9か月目では、512、10か月目では、1024と、急激に伸びます。実は10か月で目標を超えることが可能なのです。

この場合、6か月頃から、急速に実力が伸びていますが、このような伸び方をブレイクスルーといいます。現代文の場合、語彙力や方法論を身につけ、経験値が上がる頃、様々な知識がつながり始め、ブレイクスルーが起きることが多いのです。

最初に楽しむ人は伸びると述べましたが、目先の成績に捉われている人、ただ偏差値を上げるために、我慢しながら勉強している人、そういう人は、即効性を求めてしまうのかもしれません。でも、嫌々我慢しながら勉強するより、勉強自体に喜びを見出し、楽しみながら勉強した方が、絶対に伸びます。

したがって、究極の思考力をつけるためには、無我夢中になってみることが必要です。

GOOD
  • 即効性を求めない
  • 無我夢中になる
  • いつのまにか
    伸びている
  • ブレイクスルー
BAD
  • 即効性を求める
  • 我慢しながらやる
  • なかなか伸びない
  • ブレイクスルーが
    訪れない

10-Cわかりにくいものに挑戦する

今という時代は、一般的には、わかりやすいことがよいことで、わかりにくいことがよくないこととされています。でも、究極の思考力を身につけるためには、わかりにくいものこそ、必要です。

食べ物の比喩を使いましょう。ハンバーグは、人気のメニューです。柔らかくて食べやすいです。通常のお肉の場合でも、「やわらかい」のが、ほめ言葉です。でも、柔らかいものばかり食べていては、あごの筋肉を鍛えることはできません。反対に、骨ごと食べられるような小魚や固い木の実などは、人気がありません。でも、これらのものをいつも食べていれば、あごの筋肉が鍛えられ、顔のラインもすっきりするかも知れません。

文章も、これと同じことです。柔らかい文章、わかりやすい文章を読んでいても、思考力を鍛えることはできませんが、硬い文章、わかりにくい文章に挑戦すれば、思考力を鍛えることができるのです。

わかりやすいよりもわかりにくいのが、実はよいことだということを、わかりやすく述べてしまいましたが、究極の思考力を身につけるためには、わかりにくい文章に挑戦すべきです。

わかりにくい文章に挑戦したとき、なかなかわからないわけですから、苦痛を感じるかもしれません。でも、そこでやめてしまっては、苦痛の記憶が残るだけです。ほとんどの人は、苦痛が嫌いです。私大の受験生に、「東大の問題やってみる?」と聞くと、たいてい嫌がります。

ここが、究極の思考力をつけるか否かの分かれ道です。思考し続けることから逃げてしまった人は、そこで終わりです。あとは、わかりやすいものに向かうだけです。反対に、考えることから逃げない人、最後まであきらめない人には、自分の力で解答にたどり着いたとき、本当の喜びを感じることができるのです。

そのとき、脳内には、一種の快感物質、脳内麻薬ともいわれるドーパミンが放出されているといいます。苦労しても、その苦労を忘れさせるほどの喜びを感じるのです。

ここで、ドーパミンが脳内麻薬といわれていることに注意してください。麻薬には中毒性があります。脳は、もう一度同じ喜びを感じたいと思うわけです。その結果、向かうのは、よりわかりにくい文章、より難しい問題です。より簡単な問題では、満たされなくなるのです。

このようなサイクルに入った受験生は、苦労を苦労と思わなくなります。苦労が大きければ、その分、喜びも大きいと、経験的にわかっているからです。登山家や冒険家の心情に近いかもしれません。

登山家や冒険家は、命の危険にさらされますが、現代文の試験問題を解くのに、そんなことはありません。頭は、どれだけ使っても、大丈夫。鍛えれば鍛えるほど、それに応えてくれます。また、現代文の問題には、必ず答えがありますし、その答えに到達できるように問題は作成されています。きわめて安全に脳内麻薬の放出による喜びや快感を手に入れることができるのです。

たとえば、漢字の問題や簡単な語句問題、センターレベルの選択肢で、ドーパミンが出る人は、ほとんどいないでしょう。でも、東京大学の文系国語の4番、随筆の問題に本気で挑戦したら、違う世界が見えてくると思います。じっくりと問題に取り組み、自力で正解に至ったときのドーパミンの量は、脳内麻薬の中毒になるのに十分でしょう。もっと難しい問題を求めるようになるはずです。

このように、楽を求めて考えることから逃げるのではなく、考え続けることによって苦労を乗り越え、本当の喜びを獲得するというのが、究極の思考力を持つ最強の受験生になる方法です。

GOOD
  • 難しいものに挑戦
  • 苦労する
  • 乗り越える
  • 本当の喜び
  • 快感
  • どこまでも
    伸び続ける
BAD
  • 難しいものを
    避ける
  • 楽を求める
  • 本当の喜びがない
  • 快感もない
  • 伸び悩む

自分の脳をどのような脳にするのか、それをデザインするのも、自分の脳です。究極の思考力を持つ最強の脳を目指すという選択をするかどうかも、結局は、自分の脳が判断することなのです。

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